疾患別看護計画:糖尿病

糖尿病の看護計画

#1糖尿病に対する認識不足・知識不足の為に適切な自己管理が出来ない

目標:糖尿病を受け止め、今後の自己管理に対して前向きな気持ちを持つことが出来る。食事療法・運動療法の必要性及び方法を理解することができる
O-P
1 自覚症状:口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少、合併症などの有無
2 検査データ
3 過去の糖尿病教育の経験の有無
4 治療に対する理解とその反応(食事療法、運動療法、薬物療法)
5 疾患に対する知識の状況
6 生活背景・仕事の状況
7 家族構成と患者にとってキーパーソンになる存在の有無
8 家族の食事療法、運動療法に対する理解と協力態勢
T-P
1 高血糖症状は早期に対処し、血糖のコントロールの正常化を図る(医師の診断に基づいて決定された薬物療法を確実に実施する)
2 現在までの日常生活を振り返り、改善すべき点、良かった点などを共に考えて出していく
3 日常生活の改善すべき点に対し、自分で工夫できる点、改善できそうな方法を話し合いの中で立案していく
4 患者だけでなく、家族と共に今後の生活について話し合いの場を持ち、どの部分で協力が必要なのかなどの協力態勢が確立できるような働きかけをする
E-P
1 症状出現時は、医療従事者に早期に伝えるように指導する
2 退院後も定期受診が必要であるかを伝える
3 患者の理解度に応じて糖尿病及び合併症についての説明を行うと同時に、必要であれば糖尿病室への参加を促す
4 食事療法について説明し、必要であれば栄養指導を受けるように説明する
5 運動療法の意義と具体的方法について説明し、患者の日常生活の中で実施可能な運動を共に考えていく
6 患者会及び糖尿病境界に関する情報提供を行う
7 家族に対しても糖尿病教室などへの参加を促す

#2インスリン注射への不安・恐怖、不適切な使用に伴い、低血糖の恐れがある

目標:インスリン注射に対する恐怖や不安が軽減する。低血糖症状が起こりやすい時を理解し、早めに対処できる
O-P
1 インスリン注射に対する反応(表情、言動、態度)
2 インスリン注射に対する受け入れと理解度
3 インスリン注射の手技(薬剤の名前、単位、自己注射の一連の動作)
4 食事、運動、仕事などの日常生活パターンの状況
T-P
1 患者がインスリン注射への思いや不安を表出できるような雰囲気作りを行う
2 自己注射の手技が確実に行えるようになるまで、心身両面での援助を行う
3 日常生活とインスリン自己注射との両立について話し合う
4 家族職場などの周囲の人々に対して低血糖発作への理解と協力を求める
E-P
1 インスリン療法と自己注射の必要性について説明する
2 インスリン自己注射の指導
a 薬剤の名称、使用単位、注射部位と注射手技についてチェックリストなどを用いて指導する
3 低血糖の説明と対処法について指導する
a 症状及び出現時の血糖自己測定、糖質の補給など具体的な方法を説明し、糖尿病手帳の携帯を勧める
4 家族へもインスリン自己注射及び低血糖について説明する
5 シック・デイ時の対応を説明する

#3血糖コントロール不良に伴い、急性合併症出現の恐れがある

目標:自己管理の必要性を再確認し、今までの生活の問題点を振り返ることが出来る
O-P
1 自覚症状
2 検査データ
3 治療の内容とその効果・副作用
4 日常生活の状況
5 血糖コントロール不良に対する患者・家族の反応
T-P
1 緊急に指示された検査を正確に実施する
2 症状改善の為の治療・処置への援助を行う
a 高血糖時:インスリン、血管確保及び補液の確実な実施
b 低血糖時:糖質補給を実施
3 日常生活援助を行う
E-P
1 食事運動薬物療法の見直しを行う
2 必要であれば糖尿病教育を再度実施する
3 家族及び周囲の支援態勢の確認と指導への参加を勧める

#4糖尿病性神経障害や循環障害に関連した足病変の進行により、壊疽に至る恐れがある

目標:足病変予防の為、フットケアの必要性を理解し実践することができる
O-P
1 足部の状態
a 外傷、熱傷、水疱、足指の変色、爪白癬など
2 足部の異常感
a 下肢の異常感覚、冷感、痛み、足先のしびれ感などの有無
3 手足の感覚喪失
a 振動覚、温度覚、痛覚
4 血糖コントロールの状態
T-P
1 入院時や外来受診時に足の観察とフットケアを行い、異常があれば速やかに処置する
2 胼胝(たこ)やウオノメの処置を行う
E-P
1 足病変予防の為には、血糖コントロールが重要であることを伝える
2 毎日足を観察して次のフットケアをこまめに行うよう説明する
a 足全体を毎日よく観察する(自分でできない時は家族の協力を得る)
b 足は指の間までよく洗って乾燥させる
c 足に合った靴を選ぶ。サンダルや下駄は避ける
d 靴を履く前に、異物があるかどうか確認する
e こたつ、湯たんぽ、アンカなどの暖房器具はできるだけ使用しない(やむを得ない時は体から十分離して用いる)
f 浴室や洗面所で熱湯に触れないようにする

#5自己管理ができない

目標:
治療に沿った日常生活活動が理解できる
治療と合併症予防管理が理解できる
血糖値が安定する
病院食に慣れ食事内容が理解できる

O-P
1 疾病に対する知識、理解度、学習意欲
2 日常生活行動、活動状況
3 食事の摂取量、食事療法についての理解度
4 症状の観察
・ 身体症状(低血糖高血糖症状の有無、視力障碍、下肢しびれ、知覚異常)
・ 精神症状(不安やストレスの有無)
5 検査データ把握(FBS・HBAIC)
6 インスリン自己注射や事故血糖測定の手技

T-P
1 信頼関係を築き相談者になる
・ 不安や不明点、不便な事
・ 病院食の味付け、量、メニューは理解できたか、食品交換について
2 服薬確認
3 血糖値自己測定、インシュリン自己注射の方法と確認
4 栄養士による栄養指導の機会を設ける
E-P
1 退院に向けての指導
・ 食事や運動、薬物療法の自己管理の継続の必要性
・ 低血糖、高血糖時の対処法
・ 情報提供ー食事宅配サービスや保健機関の利用など

#6糖尿病に対する病識がないため、指導が受け入れられにくい

目標:患者自身が主治医となり管理しようという動機づけができる
O-P
1 生活背景:職業、生活リズム、年齢
2 糖尿病の理解度、教育に対するストレス
3 食生活、運動量:活動内容の把握
T-P
1 教育内容を習得する能力があるかどうかを判断する:チェックリストを活用
2 教育を始める時期を判断する
3 教育の内容を決定し医師の方針を把握する
4 殆どの患者は自己血糖測定を行い自覚を深めるようにするが、その時期や一日に何回行うか、舌苔に測定は必要かなどは医師と看護師が話し合い決定する
5 教育を始める時に患者を積極的にさせるように、医師と話し合いながら患者一人一人に合った教育を行う
6 患者に能力がない場合は家族に説明する
7 スライド、パンフレット等の教材を使用し、病態や治療の原則を十分理解させる
E-P
1 自己血糖測定法を説明する

#7血糖コントロールに関連して低血糖、高血糖が起こる可能性がある

目標:低血糖高血糖に対する知識を持ち、冷静に対処できる
O-P
1 検査データ:HbA1c、HbA1、血糖値
2 食事量、運動量
3 低血糖症状、高血糖症状
4 指示された薬物療法が確実に行えているかどうか
5 経験の有無、知識の程度
T-P
1 低血糖、高血糖時の症状を家族を含めて説明する
2 前駆症状があれば血糖測定をする
3 血糖値が安定するまで1日4回血糖測定をする
E-P
1 パンフレットを使用し指導する:経口血糖降下剤:薬理作用、副作用、対処療法、服用方法。インスリン:薬理作用、管理の方法、副作用、対処療法、インスリンの取り扱い、注射部位、注射方法
2 低血糖症状あれば医師看護師に報告するように指導する
3 常時当分携帯の指導

#8食事療法の理解が不十分であるため間食をしたり、食事制限に対するストレスが生じる

目標:食品の選択と交換ができ、空腹感の対策ができる
O-P
1 食生活、嗜好、間食の有無、調理者、日常の摂食状態
2 体重
3 言動、表情
T-P
1 栄養指導の依頼をする
2 問題点を抽出し、ともに分析しながら理解を深める
3 食事療法は複雑であるが徐々に慣れ、必ずできるという事を説明する
E-P
1 食品交換票の購入と活用方法を説明する
2 標準体重の計算方法を説明する
3 食事回数は最低3回で、よく噛んで規則正しく摂取する効果を説明する
4 人工甘味料を使用し低エネルギ―で量の多い料理を作る。また間食を摂取する場合も低カロリーの食品を摂取するように指導する

#9運動療法の必要性が理解できず運動を継続できない可能性がある

目標:一生続けられる自分に合った運動を見つける
O-P
1 合併症の有無
2 病識、理解度
3 家庭での行動範囲、現在の行動範囲と程度
4 職業
T-P
1 合併症の有無により運動療法の適応と程度を医師と相談し決定する
2 運動療法の種類は患者の意見を考慮し決定する
3 日々の運動状況を知り継続できるよう援助する
E-P
1 運動療法の意味と危険性、方法などをパンフレットを用いて説明する

#10運動中に低血糖が起きやすい

目標:予防と発作時の対処ができる
O-P
1 血糖の状況
2 運動量、方法
E-P
1 低血糖時の対処方法を指導する
a 薬物療法中の患者は砂糖、キャンデーをもつ
b 報告
2 運動療法の時間帯を指導する
a 朝食後または昼食後1~2時間
b 運動開始時間の看護師への報告

#11自己注射に対する正しい理解がなく、うまく自己注射が出来ない

目標:患者又は家族が正確かつ安全に注射ができる
O-P
1 生活背景
2 理解度
3 インスリンの知識
4 必要物品の管理
T-P
1 状況に応じて患者がするか家族がするかを判断する
2 患者の緊張や不安を取り除く
3 正確に行えるようになるまで、薬液量や手技は必ず確認する:チェックリスト活用
E-P
1 注射、部位、方法清潔操作の手技を説明する
2 インスリンの知識、Sick Day等の対処方法を説明する:パンフレット使用

#12入院中の食事、運動、薬物療法を退院後継続していく自信が持てない

目標:食事運動薬物療法を含めた糖尿病の自己管理が出来、合併症の悪化予防と早期発見ができる
O-P
1 家族の受け入れ
2 職業
3 嗜好品
4 合併症の程度、退院後のHbA1c
5 家族での行動範囲
6 不安、不明な点
T-P
1 必要のある患者は退院後も地域と連携をとり継続看護を行うように配慮する
2 退院1週間前に試験外泊をさせ、家庭での不明な点や不安な点を再確認する
3 問題点が明確になれば医師看護師患者ではカンファレンスを持ち解決策を考える
4 退院後の行動範囲の決定を医師と共に行う
5 糖尿病教室の参加を勧める
6 自己管理のチェック内容を確認させる
E-P
1 パンフレットを使用して日常生活の指導
2 退院後も通院治療を継続し、困った時には病院に連絡するように説明する

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