疾患別看護計画:ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群の看護計画

#1低アルブミン血症による浮腫が出現し、違和感や倦怠感がある

目標:浮腫が消失し違和感や倦怠感が消失する

O-P
1 検査データの把握:血清アルブミン値、尿量、尿たんぱく量、電解質、BUN、クレアチニン、炎症所見
2 浮腫の状態の観察
a 体重の増減:必要があれば日内変動
b 浮腫の部位:眼瞼、手指、四肢、外陰部
c 圧痕の程度
d 腹部膨満の有無:腹囲の増減
e 呼吸状態
f 皮膚の状態:表皮、亀裂の有無
3 バイタルサイン:特に血圧の変動
4 自覚症状:倦怠感、呼吸苦、四肢の脱力感、手指の違和感等
T-P
1 臥床時には下肢を挙上する
2 皮膚の保清、保護介助を行う
3 保温に努める:湯たんぽや電気毛布を使用するがやけどに注意する
E-P
1 安静の説明
a 医師の許可範囲での運動量を守り、できるだけ安静臥床する
b 安静の意義を説明する:腎血流量を増やすことにより腎臓への負担が軽減する
2 利尿剤、アルブミン製剤等の使用に際して、その意義を説明する
3 尿量が極端に少ない場合や自覚症状が強くなった時は訴えるように指導する
4 皮膚を締め付けるような衣類は避けるように指導する

#2低アルブミン血症、免疫グロブリンの減少により易感染状態になる

目標:感染予防に対する知識を持ち実施できる

O-P
1 バイタルサイン:特に熱発の有無
2 皮膚の状態:創傷の有無、発赤浮腫の強い場合は特に褥瘡の有無
3 咳嗽、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、咽頭発赤、嗄声、倦怠感等の感冒症状の有無
4 尿の性状
a 混濁、浮遊物の有無
b 膀胱炎症状の有無:排尿時痛、残尿感、頻尿
5 排便の状態:下痢の有無
T-P
1 保清
a 状態に応じて石鹸清拭、洗髪等を介助する
b 爪を切る
E-P
1 抵抗力が低下していることを説明し、感染予防の指導を行う
a 睡眠食事を十分にとる
b 含嗽の励行
c 傷があれば看護師に報告するように指導する
d 手洗いの習慣をつける:食前、帰室時

#3食事制限があるため好みの食事が摂取できない

目標:食事療法が理解でき無理なく食事摂取ができる

O-P
1 食事摂取状態の観察
a 摂取量、残量のチェック
b 塩分制限が守られているか否かのチェック:
c 食事に対する不平不満
d 患者の嗜好偏食の有無
e 水分摂取状況
f 食事療法に対する考え方、関心度、理解度のチェック
g 家庭での食事準備者の確認
h 外泊後の検査データ、浮腫状態の観察
T-P
1 栄養士、医師と連絡を取り退院後の食事療法の方針を立てておく
E-P
1 食事療法の必要性を繰り返し説明する
a 塩分制限:浮腫のある場合は厳重にする
b 高たんぱく食:ただし、腎機能低下のある場合は制限する
c 動物性脂肪を避ける:高脂血症を伴うことが多い
d ビタミンなどを多くとり栄養のバランスを考慮する
e 栄養士による食事指導
f 外泊中の食事調査に基づいた食事指導

#4安静を強いられるため精神的にストレスを生じる

目標:安静の必要性を理解し焦燥感なく入院生活が送れる

O-P
1 安静の必要性の理解度
2 安静度の範囲の把握
3 安静臥床に起因するいら立ち
4 安静が守られているかどうかの確認
T-P
1 気分転換を図る
2 検査時には状態に応じて車椅子で移送する
E-P
1 安静の意義必要性を説明する
2 疾患について説明し理解を促す

#5ステロイド療法による副作用が出現する可能性がある

目標:副作用が理解できたうえで、正しくステロイドの服用が行える
O-P
1 ステロイドの副作用の出現に注意する
a 感染病巣:易感染性に留意する、WBCをチェック
b 内分泌系:続発性副腎皮質機能不全、ステロイド性糖尿病:尿比重尿のテステープチェック、口渇の程度
c 消化器症状:潰瘍、悪心、嘔吐、腹部膨満感
d 精神神経系:不眠、うつ状態、眩暈(夜間の睡眠状態)CMIテスト結果、性格変調
e 筋骨格系:筋肉痛、関節痛
f 満月様顔貌
g その他:顔面灼熱感、多毛、易疲労感
2 ステロイドの服用が確実に行われているか確認する
T-P
1 ステロイドの開始後しばらくは看護師側管理歳確実に与薬する
2 ステロイドの副作用に対する対症看護を行う
3 ステロイド製剤について医師の説明後、理解不足の点があれば補足する
4 患者の性格、知識に応じた説明を行い、ステロイド不信や恐怖心を抱かないように配慮する

#6退院後の生活に不安がある

目標:不安なく社会生活を送ることが出来る
O-P
1 退院後の食生活と食事療法に対する理解度をチェックする
a 食事療法に対する考え方、関心度
b 現在の治療食に対する乾燥
c 食事療法継続の自信
d 家庭での食事準備者
e 食事準備者の食事療法の理解度
f 外食の有無と頻度
g 嗜好品:酒、コーヒー
h 食事量、主食、食事時間
2 退院後の運動量を把握する
a 職業:労作度、通勤方法、残業や出張の有無
b 日常生活:睡眠時間等
c 趣味:スポーツ
3 社会的家庭的立場と責任
T-P
1 患者と共に医師の説明を聞く
a 退院後の運動許容量
b 食事療法の方針
c 病状
E-P
1 食事指導:パンフレットを参考に行う
a 塩分制限:浮腫のある場合は厳重に行う
b 高たんぱく食:腎不全を伴ってくればタンパク制限となる
c 動物性脂肪の制限
d 水分制限:浮腫のある場合のみ
e 高カロリー食:肥満や糖尿病、体重増加傾向のある場合は異なる
f 高ビタミン:高カリウム血症がある場合は注意を要する
g 規則正しい食生活を心がけ、暴飲暴食や欠食を避ける
2 安静指導
a 医師の許容する運動量、仕事量を守るように指導する
b 安静時間をとることを心がけるように指導する
c 規則正しい生活を送り過労は避けるように指導する
d 浮腫のある場合は特に安静を守り、下肢に浮腫がある場合は臥床時には下肢を挙上するように指導する
e 安静の意義を再度説明する
3 服薬指導
a それぞれの薬剤の効果と副作用を説明する
b 用法と用量を守るように説明する
c 副作用と思われる症状出現時には外来受診するように指導する
4 感染予防
a 含嗽励行する
b 感冒流行期は人込みを避けるように指導する
c 皮膚の清潔を心がける:特に浮腫のある場合

#7体液量過剰の為に苦痛がある(眼瞼、下腿頸骨前部、足背、胸水、腹水)

目標:浮腫や浮腫に伴う苦痛が軽減する
O-P
1 浮腫の部位と程度
a 浮腫の程度は指の腹で軽く圧迫して、圧迫痕の窪んだ深さを見る
b 腹囲、四肢周囲の測定
2 皮膚の異常の有無
3 水分出納
4 体重測定
5 バイタルサイン
6 呼吸音
7 栄養状態(検査データ、食事摂取量)
T-P
1 安静を保持させる
2 塩分を制限させる
3 利尿薬を投与する
4 浮腫のある部分の皮膚を保護する
5 安静の為に、日常生活に不自由なことがあれば遠慮せずに看護師に知らせるように伝える
E-P
1 浮腫の原因を説明する
2 食事療法の重要性を説明し、指導する
3 食事療法が理解できているかを確認する(言葉で表現できる、正しい行動が取れている)
4 血圧、体重、尿量、飲水量などを自己管理ノートに記録するように勧める
#8安楽な障害がある
目標:症状(全身倦怠感、腹部膨満感)に伴う苦痛を緩和できる。安静や食事療法に伴う食欲低下を改善できる
O-P
1 全身倦怠感の有無と程度
2 食欲不振の有無と程度、食事摂取量
3 頭痛の有無と程度
4 排便状態
5 不安の程度
6 検査値(血性総蛋白量、血清アルブミン量、BUN、血性クレアチニン、尿たんぱく)
T-P
1 安楽な体位を工夫する
a 四肢に浮腫のある時は下肢の挙上
b 胸水、呼吸困難のある時はファーラー位か側臥位
2 冷水での含嗽や口腔内のケアを勧める
3 身体の苦痛、安静、食事制限から生じる苛立ちを理解する
4 食べられるものについて話し合い、冷やしたり温めたりして食欲増進に繋がる工夫をする
E-P
1 塩分制限と十分なエネルギー摂取の必要性を説明し指導する
2 安静の必要性を説明し指導する
3 気分転換を図るための対処法を工夫する

#9ステロイド薬や免疫抑制薬による感染の恐れがある
目標:感染症を予防できる
O-P
1 ステロイド薬、免疫抑制薬の知識の程度
2 食事摂取量
3 感染の有無(症状の有無、バイタルサイン)
4 清潔行為(手洗い、うがいなど)
T-P
1 清潔を保持する(全身清拭、部分清拭、足浴、口腔ケア、更衣、下着の交換)
2 標準体重を維持させるために体重をコントロールさせる
3 皮膚の外傷を避けるよう注意を促す
4 病室の環境整備を良くする
E-P
1 ステロイド薬の正しい服用方法、作用、副作用について説明する
2 治療について正しく理解出来るよう説明する
3 日常生活における感染防止対策について指導する
目標:不安を緩和できる#10予後の不安感がある
O-P
1 睡眠状態
2 食欲
3 落ち着きのない言動
4 不安の程度
T-P
1 不安の原因を明らかにする
2 可能な範囲で不安の原因を取り除く(知識不足、間違った情報など)
3 患者が不安や心配事を表出できるように、話す時間を持つ
4 患者の気持ちを理解する
5 患者の疑問や質問に誠実に答える
6 患者の苛立ちや不満を受け止める
7 家族の気持ちを表出できるように関わる
E-P
1 病気について正しい知識を提供する
2 食事や内服薬、日常生活活動などの自己管理の大切さを説明し、適切に自己管理ができるように指導する
3 ライフスタイルや生活習慣の変容について、その重要性を理解できるように説明する
4 家族を交えて治療と今後の生活について話し合い、家族の協力を得る
5 家族に患者の理解が必要であることを説明する
6 職場や学校に患者の病状や休息の必要性を説明し、理解と協力を得る

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