疾患別看護計画:摂食障害

摂食障害の看護計画

#1拒食することにより栄養失調状態になる可能性がある

目標:生命維持に必要な栄養補給が出来、体重が増加する
O-P
1 食事量、間食、食事パターン、好き嫌い、食習慣の変化
2  全身状態、顔色、皮膚色
3 脱水症状の有無:尿量、皮膚の状態、水分バランス
4 血液データ:電解質、総蛋白、アルブミン
5 消化器症状
6 生活リズム、活動性、トイレ内の閉じこもりの状況
7 歯の状態
8 バイタルサイン
9 体重(BMI)
10 家族歴(遺伝、母子関係)パーソナリテイ、キーパーソン
T-P
1 治療に対する両価的な思いに共感し、コミュニケーションを持ちながら信頼関係を築く
2 状態に合わせて配膳やデイルームへの誘導を行う。また必要時食事介助を行う
3 食事の内容と摂取状況を観察し治療方針に応じた差し入れを家族に依頼する
4 全身状態および症状に合わせ経鼻カテーテル、点滴静脈注射、高カロリー輸液による栄養補給を考える:必要時、栄養サポートチームの介入を考慮
5 週1回の体重測定を行う。また必要時医師の指示により測定する
6 フルーツジュースや繊維質の多い食物の摂取を勧める
7 排泄(便の色、回数、尿量)の記録
8 食事時間外でも摂取できるように飲食物を用意しておく
9 一度に多く摂取できない場合は、補食を取り入れるなど分割して食べるように勧める
10 出来るだけ栄養価とカロリーの高いものを勧める
11 「食べないと衰弱する」とか「死ぬかもしれない」と言ったり「注射をする」と脅かさない
12 食べた時は指示する
E-P
1 患者と家族に食事の必要性を説明し、家族に対しては差し入れや調理方法など協力を得る
2 食事摂取の不可能な時は好きな者、食べやすいもの、栄養価の高いものなど具体的に例を挙げて説明する
3 患者に水分出納のチェックの必要性を十分指導する

#2病識の不足により入院の同意が得にくく、治療に対して協力が得られにくい可能性がある

目標:入院の必要性が理解でき入院生活に適応できる
O-P
1 精神状態の把握:行動、言動、表情、母子間、家族間の言動、行動、病識や疾病の理解度、ボディイメージ
2 日常生活行動:排泄、更衣、入浴、洗髪などの清潔、食事、活動、睡眠、コミュニケーション
3 入院前の食生活の状態:拒食、過食、嘔吐、摂食量
T-P
1 低栄養からくる脳委縮の為理解力の低下がある場合は、オリエンテーションを分割して行い、状況の観察をする
2 ADLやセルフケアなどを考慮し病室、ベッドの位置を決める
3 不必要なものは主治医と相談し家族に持ち帰ってもらう
4 患者の状態によりADLの介助を行う
5 患者が出来たことや好ましい行動について一緒に評価し認めながら患者に関心があることを伝える
E-P
1 入院治療の必要性を根気強く説明する
2 分からないことはそのままにしないで質問するように促す

#3気分にむらがあり、気分の良し悪しで摂取量が増減する

目標:自分を価値ある人間と感じ、ストレスによって食事に影響が出ないような対処方法を身につける
O-P
1 食事についての考え方
2 ストレスへの対処行動
3 周囲のサポート体制
4 性格傾向:未熟さ、内向的、完璧主義、依存的など
T-P
1 食事の摂取は決められた時間内にのみ許可し、不安、罪責感、抑うつ気分と食事行動を結び付けないようにする
2 食事以外の時間に感情を表現するように促し、気持ちを受容する
3 相談できる相手はいるか、ストレスを緩和させる活動は何かを話し合う
E-P
1 ストレスに対する反応を患者と話し合い、ストレス時には言語化できるように説明する
2 規則正しい食事の重要性を説明する

#4食行動の異常(拒食、過食、嘔吐)により著明なるい痩があり生命の危機がある

目標:適切な栄養状態に回復し、栄養不良による合併症がなくなる
O-P
1 バイタルサインのチェック
2 顔色、爪床色、四肢の冷感
3 皮膚の乾燥や浮腫
4 体重
5 月経の有無
6 検査データ:CBC、生化学、内分泌、基礎代謝
7 意識レベル
8 便と尿量
9 褥瘡の有無
10 嚥下困難の有無
11 上腹部不快感
12 嘔吐の有無
13 食事摂取量
14 下剤、利尿剤の服用
T-P
1 バイタルサインを測定し変化をみる
2 同一条件で体重測定し変化をみる
3 ADLの介助を行う
4 末梢循環を促す目的で保温に努める
5 経管栄養を行う場合には注入後30分は状態を観察する
6 高カロリー輸液を管理する
7 経口摂取が可能なら嚥下できるものから少量づつ勧める
8 こまめに水分摂取を促し水分バランスを見る
9 浣腸、下剤、利尿剤の乱用は行わないように約束し行動を見る
10 痩せる為の過度の運動を行わないように説明し話し合いを持つ
E-P
1 痩せることによる生命への影響と現在の身体状況を説明し、食事摂取の必要性を理解してもらう
2 安静度を説明する

#5行動療法により様々な問題行動が出現する可能性がある

目標:自尊心を持ち、健全な食習慣が形成される
O-P
1 行動制限の枠内で日常生活が出来ているか。安静度:読書、ラジオ、テレビ、散歩、自室内、病棟内、病院内。清潔。制限事項:面会、電話、手紙。食事量。間食の有無。嘔吐の有無
2 食事中の態度や表情、食事を摂取する時間
3 治療に対する理解度、考え方
T-P
1 行動制限内容を確認する
2 スタッフ間で治療の統一性を持つ
3 治療過程で制限内容の変更と解除を把握する
4 吐気、食欲不振、腹部膨満などの心気的訴えに対しては、検査結果や観察結果などを踏まえ中立的態度で接する
5 3日以上の便秘が続けば下剤の使用を医師に報告し指示を受ける
6 敵的に条件をそろえ体重測定する
7 体重測定で増加がみられない場合は理由を追及したりせず嘔吐又は食事を巧みに捨てていたり、下剤の乱用も考えられるため行動を観察し異常行動があった場合は、医師に報告し話し合いの機会を持つ
8 やせようと試みることが多く、入浴や洗髪に時間を掛けようとすることがあるため、入浴の状況を見守る
9 食事時間が長い場合は時間をチェクし摂取する条件や約束事が守れるように関わる
10 患者の言動から無断離院が予測される場合、少なくとも1時間に1回は訪室し予防に努める
11 問題行動の改善や適応行動が見られたらその都度評価しできたことを一緒に喜ぶ
12 同室者に対しては、治療法について簡単に説明し、同情など過度の関心を示さないよう協力依頼する
13 食物や食事自体を話題にせず情緒的問題に焦点を当てる
14 やせるための衝動行動をとらないように感情をコントロールすること、ありのままの自分を受け入れていくことの大切さを伝え話し合っていく
E-P
1 治療上の制限事項を破った時はその場で必ず注意し指導する
2 家族に対し医師から治療中の面会、電話などの行動制限について説明を行い協力を得る
3 食物、栄養、体重への偏った考えがある場合は患者指導をする

#6自立すること、成長することへの不安がある

目標:自立と成熟した行動を身につけ、社会復帰に向けての準備ができる
O-P
1 他者とのコミュニケーションの仕方
2 行動
3 外泊中のようす
4 自立や成長することへの考え方
T-P
1 対応方法を統一し年齢に応じた接し方をする
2 成し遂げたことに対し肯定的な指示を示し素直に褒める
3 患者の長所と能力に関心を向ける
4 成功の体験ができるように関わっていく
5 レクレーションへの誘導
6 仕事家族の問題、自立、性、社会生活について思っていることを表現できるように援助する
7 家族との面接を行い治療への家族の参加を促す
8 家族とその役割について抱いている感情の表出を促す
9 外泊の成功度合を評価し、外泊前後での感情、気分、活動を観察し対策を一緒に考えていく
10 治療退院後の計画に患者の家族も一緒に参加できるように調整する
11 思春期の患者は学校など所属する環境と連携をとる
12 必要に応じてサポート資源を活用できるように調整する
13 今、自分が感じている気持ちを素直に受け入れて良いことを伝えていく
E-P
1 ストレスに対する患者の捉え方や反応を知り、ストレスを感じた時は周囲の人たちに思いを伝えるように指導する

#7生命に危険を及ぼすほどの体重減少や活動過多であっても、病識の欠如から、治療に拒否的な態度がみられる

目標:自分の状態が病的であることを認識でき、必要な栄養補給や治療を受けて栄養状態が改善し、生命を維持することが出来る
O-P
1 栄養状態:体重、BMI、羸痩の程度
2 検査データ(貧血の有無、血性蛋白量、電解質異常の有無など)
3 行動範囲、日常生活の過ごし方(十分な休憩が取れているか、活動により身体に負荷がかかっていないか)
4 点滴や経口栄養に対する反応
5 食べることや体重増加に対する思い
T-P
1 必要時安静が保持できるよう身の回りの援助(身辺の整理や清潔援助など)を行う
2 患者の嗜好を把握し、食べやすいものを選んだり、患者が食べやすいと思う場所を配慮する
3 食べることを強要せず、食べられたことの患者の気持ちを共感する
4 患者の状況によっては食事時付き添い、食事を楽しめるようにする
E-P
1 経口摂取の大切さを説明する
2 どのくらいの量なら食べられるのか確認し、お互いが納得できるような食事量を決める

#8食行動異常や虚言により正確な食事摂取量や体重が把握されにくく、心身両面にわたり不安定な状態である

目標:食べることや体重増加に対するこだわりや不安が軽減され、日常生活の中で食事を楽しむことが出来る
O-P
1 体重測定場面
2 食事摂取場面
a 実際の食事量よりも多く摂取したと報告していないか
b 食べていないのに食べたと報告していないか
c 食べた直後に嘔吐していないか
3 食べることに伴う異常行動の有無(盗み食いや隠れ食いなど)
4 下剤の乱用の有無
T-P
1 体重測定は必要があれば付き添い、衣服に変わったところは内科、自分の体重を偽って報告していないか確認を行う
2 体重の増加や食事をとることへの不安や恐怖を持つ患者の気持ちに寄り添い、思いを受容する
3 排泄行為を観察し、排便・排尿回数が極端に増えていないか確認を行う
4 患者にとって看護師は何でも聞いてくれる人、無理なことを強制しない人であるという安心感が持てるようにする
E-P
1 体重が増えることや食べられることは、身体にとってむしろ望ましいことであることが認識できるように働きかける
2 どうしても食べられない時は無理に食べなくても良いことを保証し、自己判断で食物を捨てたり隠したりする前に看護師に報告してもらうようにする

#9他患者と良好な人間関係が持てず、トラブルを起こしやすい

目標:他者に対する関心が持て、自分の行動をコントロールすることが出来る
O-P
1 同室患者との人間関係
2 レクレーションや集団療法中の他患者との関係
3 表情、会話、服装における不自然さや違和感の有無
T-P
1 他患者と良好な人間関係を保てるよう仲を取り持つ
2 盗みや盗み食いが疑われた場合は、現場を確認した上でなぜそのような行動をとったのかを聞き、気持ちを受容する
E-P
1 逸脱した行動が見られた時はそのことについて話し合い、許されない行為であることやそのような行為をとっても自分の気持ちが相手に伝わらないばかりか、関係を悪化させるという事を説明する
2 集団生活では譲り合いながら、生活していかなければならないことを説明する

#10家族の過剰介入により健全な親子関係が形成されておらず、心理的ストレスがある

目標:患者と家族に良好な関係が形成され、患者だけでなく家族全体が成長していくことが出来る
O-P
1 家族との面会場面
a 患者や家族の表情、態度、会話の仕方
2 患者の家族に対する思い
3 家族の患者に対する思い
T-P
1 家族を批判、弁護しない中立的立場で家族に対する患者の不安・不満を聴き助言する
2 親の、患者を心配に思う気持ちを受け止める
3 家族には主治医の方針を伝え、不必要な介入は断り、親の言動により患者の気持ちが動揺しないよう図る
E-P
1 摂食障害は家族との葛藤が深く関係している病気であることを説明する
2 母親が子供以外のことにも関心を持て、充実した生活を送れるように援助する

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