疾患別看護計画:統合失調症(計画パターン2)

統合失調症の看護計画

#1非現実的な思考が優先されるために、セルフケア行動が取れない

目標:食事、入浴、洗面の誘導に応じることが出来る。休息、睡眠、活動のバランスを適切に保つ
O-P
1 表情、言動、精神症状(幻覚、妄想)の有無
2 入浴、洗面、歯磨き、更衣状況(自主的に出来ているか、誘導時の反応、洗身洗髪の有無、口臭眼脂の有無など)
3 身の回りの整理整頓ができているか
4 食事摂取状況(自主的に出来ているか、誘導時の反の黄、拒食はないか、食べ方、食べる量、スピード、水分は取れているか)体重
5 清潔や食事・整容に対する興味・関心
6 排泄状況
7 睡眠や休息状況(入眠困難の有無、眠りの深さ、覚醒状況、不眠時薬の使用状況)日中の活動量
T-P
1 昏迷状態など患者自身でセルフケア行動が取れない時は、必要に応じて介助する。介助は患者のペースに合わせて行う
2 自尊心を失わせないように、できる部分は自分で行ってもらう
3 妄想に左右されて拒否がみられる時には、そばに付き添い安心感を与える言葉をかけ現実感を持たせる
4 入浴などのその日の予定をあらかじめ伝えておく
5 興奮状態にある場合など、患者自身で休息が取れない場合には休息を促す
E-P
1 清潔にすることにより、周囲に良い印象を与えることを伝える
2 食事や入浴などの活動により生活リズムをつけることが大切であると伝える

#2現実と非現実的な世界の区別がつかないために、混乱しやすい

目標:現実と幻聴や妄想の区別がつき、不安や興奮が減少する。自分に対して肯定的な感情が持てる。退院の具体的なイメージが持てる
O-P
1 幻覚や妄想など精神症状の有無と程度
2 非現実的思考に左右された行動
3 自尊感情
4 不安混乱焦りについての訴え
5 疾患や現在の自分の状況をどのように受け止めているか
T-P
1 不安や興奮が強い時は刺激をコントロールする
2 不安の訴えに対してはそばに付き添い安心感を与える。状況に応じてタッチングを取り入れる
3 日課などを分かりやすく説明し、安全な環境であることを保障する
4 会話はできるだけ簡素明瞭に統合失調症患者とのコミュニケーションを図る
5 具体的な話題を選ぶ
6 出来ているところ、良いところを伝え自分に対する自己肯定感を持てるようにする
7 患者の焦り不安に対しては、その思いを共感しつつ、退院についての具体的イメージを持てるようにする
E-P
1 不安や混乱をコントロールできそうにない時は、早めに看護師に知らせるように伝える
2 焦る気持ちに対しては、具体的な退院後のイメージを持てるように働きかけ、焦って無理をしないように伝える

#3意欲・自発性の低下による活動性の低下

目標:周囲への関心が高まり活動範囲が広まる。日中臥床している時間が減少する。作業療法やレクレーションなど集団活動に参加できる。集団活動に参加し、他患者と状況に応じた関わりができる
O-P
1 精神症状(活動意欲、趣味・関心、幻覚・妄想)の有無と程度
2 1日の過ごし方
3  作業療法やレクレーションへの参加状況、活動時のようす(表情しぐさ)、活動意欲
4 他患者との交流(会話の内容、表情、状況に合った対応が出来ているか)
5 活動後や他者との交流後の疲労感
T-P
1 デイルームなどに誘導し看護師と1対1でゲームを行うなど活動の幅を広げる
2 作業療法やレクレーション活動への参加を促す。実際に行うことを拒否する場合は見学だけでも良いことを伝える
3 天気の良い日には散歩に誘導し、解放感を味わってもらう
4 訪室時は現実的な会話を持つ
5 疲労感が見られた時には休息を勧める
6 日中の過ごし方について患者と話し合う
7 活動に参加できたとき、他者と上手く交流できたときは、そのことを伝え患者が事故を肯定的に評価できるようにする
8 関心を示したことについて支持する。患者が得意な事、興味のあることを中心に話しかける
9 看護師を仲介に他患者との交流を持つ
E-P
1 メリハリを付けた生活をする為にも、日中は活動することが大切であると話す

#4非現実的な思考に左右されるために、対人関係上のトラブルを起こしやすい

目標:他者とのトラブルを起こさない。他患者と状況に応じた関わりができる
O-P
1 幻覚、妄想などの精神症状の有無と程度
2 他患者との交流のようす(会話の内容、表情、状況に合った対応をしているか、口論や暴力などトラブルの有無)
3 交流後の疲労感
4 看護師との関わりのようす
5 交流相手によって対応や反応に変化は見られないか
6 活動意欲、趣味・関心
T-P
1 毎日一定の時間、一緒に過ごして信頼関係を築く
2 声をかける際には、ゆっくり短い声で話しかける
3 患者との約束は必ず守り、できない時にははっきりと伝える
4 非現実的な会話によってやり取りが不自然になっている場合は、現実的な話題に戻す。その際誤りを否定したり患者を馬鹿にするような態度はとらない
5 患者の得意な事、興味のあることを中心に話しかける
6 他患者との交流で興奮や混乱が見られたら介入し、距離をとらせるなど場面を切り替える
7 他患者とうまく交流が出来た時には肯定的にフイードバックする
8 疲労感が見られた時には休息を促す

#5拒薬により薬物療法が効果的に行われない可能性がある

目標:薬の必要性が理解でき正確に服薬できる
O-P
1 拒薬の原因を知る
a 妄想体験の有無
b 病識の有無
c 患者や家族の薬に対する考え方
d 医師との治療関係:服薬変更の説明の有無
e 服薬時の態度や服薬に関する患者の訴え
f 医師、看護師の信頼関係
g 副作用の有無:アカシジア、尿閉、口渇、眼球上転発作、便秘など
T-P
1 服薬の説明と介助を行う
a 根気強く服薬の必要性を説明:時間をかけて何度も勧める
b 患者のプライドを傷つけないように患者に合った介助をする:口の中へ入れたり手渡したりする
c 上記の対応を行い、それでも拒薬した場合は医師に報告し指示を受ける
d 患者の病気の苦しさを認めながら、今は苦痛を除去するために薬の力が必要であることを説明する
e 拒薬の原因を知り薬を飲むことは安全であると保証する
f 薬の副作用を説明する
2 服薬確認を行う
a 必ず看護師の前で服薬してもらう
b 隠し持ったりする為服薬後の行動に注意し、ゴミ箱、洗面所などを点検する
c 舌の下に隠したりコップの中に吐き出したりする為、含嗽や歯磨きなどで吐いていないか確認する
3 主治医との言語を統一する:内服増量時、減量時、変更時
a 錠剤、散剤、液剤、注射など患者の状態に応じ医師に報告する
b 同一作用でも種類の異なった薬を使用したり、錠剤の数を減らしたりする
4 副作用への対応と副作用による苦痛を受容する
a 薬の変更、増減量
b 抗副作用剤の併用
c 副作用出現時の対応
・ アカシジア、眼球上転発作:塩さんビベリデン、塩酸プロメタジンの与薬
・ 尿閉、排尿困難:臭化ジスチグミンの与薬や導尿、圧迫排尿、流水音
・ 口渇:飲水、唾液腺ホルモン剤の与薬
・ ふらつき、血圧低下:昇圧剤などの与薬、離床時歩行時の転倒防止
・ 便秘:食事、日常生活の指導、各種下剤の与薬
5 信頼関係を築き、力づくでの与薬は原則として避ける
6 主治医の指示により薬物血中濃度を測定
E-P
1 主治医の協力を得て患者に合った服薬の必要性を説明する:拒薬の都度時間と手間をかけて繰り返し説明する
2 副作用の説明を行い内服を促す。副作用が出現しても心配ないことを説明する
3 薬物療法に対する理解が十分得られていない家族に対し、入眠時、面会時、外泊時、退院時などの機会を利用して説明する
4 入院中より退院後の自己管理に繋がる内服管理の方法を意識して指導する
5 必要に応じ、薬剤師より服薬指導を実施する

#6向精神薬の副作用により悪性症候群を起こす可能性がある

目標:悪性症候群を早期発見でき治療を開始することが出来る
O-P
1 薬物との因果関係を疑って十分な観察をする
a 抗精神病薬を注射した場合:マイナートランキライザー
b 急激な処方の変更:抗パーキンソン剤の減量
c 精神症状の悪化:精神運動興奮、拒薬、拒食、全身の衰弱、不眠
2 患者の全身状態の観察
a 発熱
b 精神症状:無言、昏迷、カタレプシー
c 神経症状:筋強剛、筋攣縮:特に顔面、舌、咀嚼筋、球麻痺様症状:嚥下困難、喘鳴
d 自律神経症状:頻脈、発汗、唾液過分泌、血圧低下、流涎
e 意識障害
f 錐体外路症状:アカシジア、パーキンソニズム、ジストニア
g 血液データ:CPK、CRP、K
T-P
1 上記症状を発見したら医師に報告する
2 発熱があればクーリングしたり対症療法を実施したりする
3 バイタルサインチェックを4検もしくは6検で行い異常の早期発見に努める
4 必要時モニターの管理をする
E-P
1 不調部位や症状を具体的に伝えるよう指導する
2 内服を確実に行うように指導する
3 安静保持するよう指導する

#7幻覚、妄想状態により自傷、他傷などの危険行動を起こす可能性がある
目標:症状を言語化でき、安全に日常生活を送ることが出来る
O-P
1 幻覚、妄想の訴えの内容と程度
2 表情、意志の疎通性
3 危険行動の前・中・後の言動や行動:奇異な行動や徴候の出現に注意して観察する
4 危険行動の内容、程度
5 他患者への影響
6 不安、焦燥感の程度や日常生活での障害度
7 食事摂取状況:食事量、食事時間
8 栄養状態
9 服薬の状況
10 ADL状況
11 睡眠状況
12 周囲の安全確認:危険物の有無
T-P
1 期待の表明や規則、制限などは一貫性を保って行う
2 自傷に対しては危険物を周囲に置かないようにし、傷がある場合は消毒、処置をする
3 暴力に対しては制止するとともに、舌苔に暴力は振るってはいけないという強固な態度で接する
4 必要に応じ医師に報告するとともに、医師の指示を受けて保護室を使用する
5 患者が看護師に対して自分を受け止めてくれる、安心できる人だと思えるように受容的な態度で接し安心感を与える
6 看護師はゆたりとした気持ちで、患者の訴えに耳を傾けて十分話を聴く
7 妄想、幻覚の内容を否定したり肯定しない:否定は不信を抱き、肯定は確信を与える
8 話題を変えながら現実に向ける
9 不安焦燥感が強い場合、医師の指示で抗不安薬、向精神薬などの与薬をし服薬確認をする
10 休養、睡眠を確保する
11 実行できない約束はしない
12 必要に応じてセルフケアの介助を行う
13 ケアを行う際にはまずその手順を説明し、患者が看護師に騙されていると思わないようにする
14 症状は一時的な物であり服薬をきちんとすれば必ず良くなっていくことを伝え安心感を与える
15 落ち着いた態度で根気良く接し、看護師は患者の興奮にまきこまれない
16 危険物があれば患者の身の回りより排除し、安全な場所へ誘導する
17 危険性が予測される場合は観察を十分に行い特に夜間や多忙時は注意する
18 看護師間の伝達を密に行う
19 医師の指示で鎮静剤を使用し、その後の観察を行う:必要時はモニタ装着
E-P
1 患者に危険行為を起こす前に、言葉で表現するように説明する
2 正しいことは認め、内容によっては現実にあり得ないことを良く説明する
3 保護室を利用する場合は、安全な環境を提供する必要があることを説明する

#8看護師と他患者とコミュニケーションが図れず、孤立する可能性がある

目標:患者が周囲に関心を持ち、感情を言語的または非言語的に表現できるようになる
O-P
1 日中の過ごし方
2 他患者との接し方、態度
3 医師、看護師との接し方
4 看護師から働きかけた場合の反応
5 レクレーションの参加状況
6 ADLの状況
7 幻聴などの症状の程度や頻度
8 家族の関わりや協力態勢
T-P
1 看護師側から回避せず、患者の反応を観察しながら働きかける
2 段階を経てレクレーションの参加を促す
3 患者の訴えには耳を傾け、十分話を聴く
4 会話が続かなくても一緒にいる時間を持つ
5 ゆったりとした態度で接する
6 ADLの誘導、必要に応じて介助する
7 短時間でも他の人と過ごせるように援助する
8 刺激を与える為ラジオなどを用いる
9 長時間、患者を部屋で一人にしない
E-P
1 スタッフや周囲の人々は安心して良い存在であることを説明する
2 非言語的表現から言語的表現へ変えるよう指導する

#9症状に左右されることで現実検討能力がなくなり、日常生活に支障をきたす可能性がある

目標:患者は妄想に左右されず日常生活を送ることが出来る
O-P
1 幻覚、妄想の訴えの内容と程度
2 日中の過ごし方、態度
a 食事摂取状況
b 水分摂取状況
c 睡眠状況
d 整容状況:洗面や行為はできているか
3 現実の問題の処理の仕方
4 薬剤の副作用の有無
a 抗コリン作用
b パーキンソン症候群
c 悪性症候群
5 状態の変化:耳をふさぐ、臥床しがちなど姿勢の変化
T-P
1 妄想の内容は問題にせず、現実をめぐっての関わりを持つ
2 患者が妄想を疑い始めたら、看護師もそれを疑っていると示し、見たままの状況を話す
3 感情を表現できるようになれば徐々に妄想を必要としなくなるので、感情表現を指示する
4 直接的で具体的な分かりやすい言葉で会話し、単純で簡潔な話題にする
5 達成感が得られるような容易で現実的なレクレーションや作業を共にする
6 食事摂取状況を把握し必要ならば援助する
7 1日の水分量を把握し不足していれば摂取できるように援助する
8 夜間睡眠の確保ができていないようであれば、医師の指示に従い睡眠剤を与薬する
9 整容更衣が出来ていなければ、声掛けを行う
10 日中の状況を観察し、不自然であれば声掛けをする
E-P
1 幻覚や妄想が起こった時や、それが活動を妨げる時には看護師に伝えるように説明する

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