疾患別看護計画:不安障害

不安障害の看護計画

#1様々な条件や誘因による葛藤があり、不安発作の起こる可能性がある

目標:患者はストレスに対する自分の行動反応を知り、ストレスに対処する代替え方法を身につける
O-P
1 スタッフとの接し方
2 他患者との接し方
3 家族との接し方
4 考えられるストレスの原因やきっかけ
5 今までのコーピング
T-P
1 感情や表現を助け患者自身が不安状態について考えられるように援助する
a 患者が不安に感じていることを自由に話してもらい、感情を表出できるようにする
b 話は受容的に聞き道徳的賛否は避ける
c 患者にある程度冷静に自分自身を見つめるように促し、不安行動を客観視できるように見守る
2 不安の原因について考えられるように援助する
a 不安の為に起こっている様々な行動、精神上の変化を一つ一つ取り上げてみるように促す
b 持っている不安を自分がどのように行動で表しているのか考えるよう促す
c 自分を不安にさせている原因は何か、ストレスの内容を具体的に考えてもらう
d 不安行動の早期徴候を自覚できるように話し合う
3 患者が穏やかな時に不安を処理する方法について一緒に考える
4 患者が弛緩法を身につけたり感情を表現した時は、肯定的なフイードバックを行うように関わる
5 自分自身と自分の能力を現実的にみられるように方向づけし、自己の自信回復を手助けする
6 不安軽減のための方法が成功したら評価し、失敗時には変わりの方法を用いるよう援助する
E-P
1 深呼吸、リラックスが自分でできるように指導する
2 軽い不安は注意力を高め、感覚を鋭く知て望ましい変化をもたらすものであると考え、肯定的に受け止めるように指導する

#2不安発作により身体症状が多彩にみられ、取り乱したりすることによる苦痛がある

目標:自傷の危険がなくなり、身体の苦痛が緩和され楽になったと表現することが出来る
O-P
1 循環器系の観察
a 動悸、頻脈
b 血圧の上昇、下降
c 胸痛
d 発作の誘因と有無
2 呼吸器系の観察
a 胸内苦悶
b 呼吸困難、咳嗽
c 過換気症状
3 消化器系の観察
a 吐気、嘔吐
b 腹痛
c 便秘、下痢
4 自律神経系
a 口渇
b 声のカスレ
c 発汗
d 皮膚蒼白、紅潮
e 頻尿
5 神経系の観察
a 頭痛
b 眩暈
c 耳鳴り
d 動揺感
e 脱力感
f 不眠
g 眼のかすみ
T-P
1 休息をとるよう促す
2 不安症状の訴えをゆっくり聞く
3 安心感が持てるように静かな自信のある態度で接する
4 過換気症候群の場合は紙袋で鼻と口を覆って深呼吸を促し、様子を見る
5 患者に付き添い安全を守る
6 出来れば刺激の少ない静かな小さな部屋に患者を移し安心感を高める
7 落ち着けるようにブラインドを降ろし部屋を暗くする
8 衣類の緊張を緩める
9 短く簡潔明瞭に表現し患者がこたえやすいように質問する
10 落ち着いたら温かい飲み物を用意する
11 苦しい部位に手を当てゆっくりさする
12 深呼吸を患者と共にゆっくり行う
13 吐気のある時は吐いても大丈夫だと伝え、速やかに含嗽用膿盆を用意する
14 医師に連絡し、薬剤使用の指示があれば実施する
E-P
1 身体症状をゆっくり聞き、バイタルサインの測定結果を伝えたうえで、この症状は一過性であり大丈夫であることを説明する

#3不安状態により日常生活が規則正しく送れない可能性がある

目標:患者が不安を少しづつ表出することで日常生活が無理なく送れ、休息、睡眠、栄養、活動の適切なバランスを保つことが出来る
O-P
1 情緒的、感情的変化:苛立ち、怯え、困惑、緊張、興奮、硬い表情、沈んだ表情
2 言語の変化
a そわそわした、しっくりしない態度
b 落ち着かない行動
c 周囲に遠慮するような話し方
d 人の目を気にする態度
e 無動、又は無目的な歩行
f 自傷、他害、自殺企図の有無、器物破損
g 注意力の欠如
h 両手を握りしめるなどの過緊張状態
3 日常生活行動の変化
a 不眠
b 食事量の変化や食欲
c 引きこもり、又は活動性の亢進
4 不安を起こしやすい環境の変化
a 入院に対して:入院をどのように受け止めているか。どんな経過で入院となったか。患者は自分の病気をどう受け止めているか。他患者とどう接しているか
b 退院に対して:退院をどう受け止めているか。家庭生活に対して不安を感じていないか。家族の受け入れはどうか。職場、学校への復帰をどのように考えているか
5 薬物療法による影響の有無
a 副作用の有無:動悸、品薬、眼球上転、胸内苦悶、眩暈、湿疹、脱力など
b 投与時期、方法:内服、注射の方法、薬物の増減、薬剤の変更
6 自律神経症状の有無:発汗、参道、頻脈、顔面蒼白、動悸、呼吸速迫、手指振戦、頭痛、耳鳴り、動揺感、口渇、頻尿、声のカスレ
T-P
1 散歩、ラジオ体操、レクレーションなどの身体的活動で過剰なエネルギーを発散させ、建設的な方向に向くよう援助する
2 緊張をほぐすために患者の就寝時の習慣を促し、睡眠の導入とする
3 食事時には、落ち着いた雰囲気をつくり摂取量を増加させるとともに消化を助ける
4 温かめの湯にゆっくり入浴する:足浴、背部の温湿布、マッサージを試みる
5 日中は私服に更衣するように促し、生活のリズムをつける
6 温かい飲み物を勧める
7 不眠時には医師の指示により睡眠剤を勧める
8 不安時には看護師の話し方、声の大きさも患者にとって騒音となることがあるため注意する
9 病院食が摂取しにくい時は、家族からの差し入れをしてもらってよいことを伝える
10 一般的には不安は話すことで軽減されることを伝える
E-P
1 不安は自信がつけば軽減される場合もあるので、具体的に日常生活上の指導などを行う
2 患者に対する家族の理解を促すために家族指導を行う

#4抑うつ気分や身体症状にとらわれ、日常生活に支障が出る

目標:憂鬱、焦燥感、身体症状が軽減され闘病意欲が湧いてくる
O-P
1 訴えの内容、頻度、変化
2 訴え方、態度
3 医師、看護師、他患者との対応の仕方
4 日常生活の過ごし方
5 症状による日常生活への影響
T-P
1 患者の社会背景、生育歴、考え方、性格など患者からも家族からも聴収する
2 言葉や態度で支持的な働きかけをする
3 気のせいだ、心の持ちよう、誰にでもそんなことはある、などとは言わず言葉遣いに注意する
4 患者を正しい方向へ導こうとするような強引なかかわりは避ける
5 家族、今後の問題などについて調整を図る
6 身体症状の訴えに対してはバイタルサインのチェックを行うなど、身体症状に応じたデータを備え、何も異常ないことを知らせ患者を安心させる
7 どうしても症状が治まらない場合は医師に報告する
8 患者は身体的、精神的に完全を求めているので、患者がその完全癖を認めるように話を進めていく
9 一つのことに執着しないようにする為にも、レクレーションに誘導し気分転換を図る
10 症状や訴えにとらわれず、患者の苦悩に対し共感的な態度で接する
11 入院初期には信頼関係の形成に重点を置き、患者が話しやすい雰囲気をつくる
12 時間、場所に配慮しながら感情の表出を促す
E-P
1 患者の訴えは看護師より誘導的に聞かず、患者から自由に話してもらいたいことを説明する

#5コミュニケーションがスムーズにとれない可能性がある

目標:患者は他者とコミュニケーションが取れる
O-P
1 訴えの内容、頻度、変化
2 訴え方、頻度、表情
3 医師、看護師、他患者との接し方
4 日常生活の過ごし方
5 精神症状(抑うつの程度)
6 気分の日内変動
T-P
1 同じことを何度言っても、中途半端な聞き方をせず患者の訴えを良く聴く
2 患者の気持ちを一緒になって考える
3 看護師は患者の言葉に表現された患者の気持ちをくみとる
E-P
1 うまく言葉にできなくても、表現することの大切さを説明する

#6自殺念慮や自殺企図がある

目標:自殺が防止され、安全な入院生活を送ることができる
O-P
1 日常の言動、行動
2 患者の表情
3 患者の普段の所在場所
4 希死念慮の訴え
T-P
1 患者と看護師との信頼関係をつくり、患者から訴えやすい雰囲気をつくる
2 自殺を思わせるサインがあった場合にはスタッフ間で情報を共有する
3 状態に応じて医師の指示の下、持ち物を確認したりひもなどの危険物を預かったりする
4 危険行動に注意して所在確認を行う
E-P
1 希死念慮が高まった時には、看護師に伝えるように指導する

#7強迫意識、強迫感情により強迫観念が出現し落ち着きがない

目標:気がかりを表出し、現実をあるがままに受け入れることが出来る
O-P
1 日常生活行動
2 家族歴
3 家族に対しての反応
4 生育歴
5 社会的背景
6 性格
7 恐怖症の有無
8 強迫観念、強迫行為の有無
9 強迫観念、強迫行為に伴う身体症状の有無
T-P
1 強迫観念の内容にとらわれず、患者の苦悩に共感的理解を示す
2 強迫症状を患者の一部分として接する
3 強迫行為を見守りながら保証をする
4 症状によっては、ほかのことに興味を持つように促し、気分転換を図る
5 医師の治療方針に基づき行動療法、自立訓練を援助する
6 医師の指示により頓服などの薬剤を使用する
7 エネルギーを過度に消耗し身体に影響を与える場合には、外からの力で患者の行動を止める
8 具体的な対処行動を試みてみる。その中で効果的な行動、うまく行かない行動を話し合って、無理なくできそうな行動パターンを見つけていく
E-P
1 治療方針に基づいて行動療法、自立訓練を指導する

#8強迫観念による内面的葛藤の苦痛を表出できない可能性がある

目標:不安、恐れ、罪責感等の感情を言語化できる
O-P
1 恐怖症、強迫観念、強迫行為の状態
a 対象
b 程度
c ベッド周囲の状態
d 言動
e 対人関係
f 日常生活への影響
g 強迫行為に伴う身体症状
T-P
1 患者の自発性を尊重し不要な介入を避ける
2 コミュニケーションの場を持ち、訴えやすい雰囲気をつくる
3 異常行動に対して、否定、中止するような働きかけをしない
4 患者の訴えを傾聴する
5 自己表現しやすい雰囲気をつくる
E-P
1 自分の気持ちを言葉で表現するよう指導する

#9対象のない不安を他者に理解されない苛立ちがある

目標:患者は感情を言語的または非言語的に表現でき、気持ちが安定する
O-P
1 恐怖症、強迫観念、強迫行為の状態
a 対象
b 程度
c ベッド周囲の状態
d 言動
e 対人関係
f 日常生活への影響
g 強迫行為に伴う身体症状
T-P
1 支持的な看護を行う
a 訴えを良く聴く
b 受容的態度で接する
2 感情の表現を助け、自己洞察を導くように関わる
a 理解のある温かい態度で聴く
b 患者の言葉を繰り返すなどして患者主導で話を勧める
c 自分で理解する方法を誘導する
E-P
1 うまく言葉にできなくてもよいので、先ずは言葉で表現してみるよう指導する

#10人間関係が表面的、儀礼的になり対人関係を持てない可能性がある

目標:人間関係を形成し周囲の人と協調した生活ができる
O-P
1 対人関係
a 協調性
b 他人の立場を理解できるか
c 対象に対しての感情
2 日常生活行動
T-P
1 日常関係を形成する
a 訴えに共感し受容的に聞いていく
2 不安に対しては保証する
E-P
1 状態に応じてレクレーション参加を促し、他患者と強調できるように指導する

#11強迫観念にとらわれ身の回りのことが出来ない可能性がある

目標:強迫観念がありながらも身の回りのことが出来る
O-P
1 ベッド周囲の状態
2 強迫行為の回数、時間帯、所要時間
3 セルフケア能力
T-P
1 身の回りのことを患者と相談して行う。決して無理強いはしない
2 患者の思考と行動について話し合い、不安の対処方法を見出せるような援助をする
3 患者と共に日常生活の計画を立て、強迫行為に費やす時間の軽減を図る
4 患者の自己評価が高まるように援助する
5 自尊心に配慮しつつADL介助を行う
6 強迫行為が長時間にわたり、休息できない場合は中止できるよう働きかける
7 退院後の生活について生活のルールをつくるなど、家族と患者の話し合いの場を設定する
E-P
1 退院後の生活を考え、家族に対して強迫行為に対する対応の仕方を指導する

#12重症強迫症では頑固な睡眠障害がある

目標:生活リズムが整い十分な睡眠がとれる
O-P
1 日中の状態
2 夜間の睡眠状態
a 入眠困難の有無
b 中途覚醒の有無
c 睡眠時間
d 覚醒状態
T-P
1 医師の指示に基づいて睡眠剤を使用する。昼夜逆転しないように日中覚醒を促す
E-P
1 消灯後は臥床を促し睡眠剤の効果で入眠できることを説明する

#13不安・心配・イライラ感の為に、安全の確保が困難である

目標:安全に過ごすことが出来る。不安レベルがコントロール可能なレベルになる
O-P
1 不安レベル(経度、中度、重度、パニック)及び内容
2 夜間の睡眠状態
3 表情、言動
4 バイタルサイン
5 自律神経化活動症状の有無
T-P
1 穏やかで脅威を与えない態度を維持し、安心感を与える
2 安全で静かな環境を提供する
3 頻回な関わりを持つ
4 不安レベルを評価する
5 現在感じていること、自分の感情を言語化するよう促す
6 同じ時間を過ごす
E-P
1 不安イライラ心配が強くなった時には、いつでもスタッフに相談するように促す

#14不安・心配・イライラ感の為に、十分な睡眠が確保できない

目標:必要な睡眠時間が確保できる
O-P
1 夜間睡眠状況
2 熟睡感の有無
3 日中の睡眠状況
4 表情、言動
T-P
1 不眠の訴えについてよく聞く
2 主治医の指示による睡眠薬の投与
E-P
1 不眠不安が強くなった場合、いつでもスタッフに相談するよう指導する

#15心配・不安・イライラ感の為に、食事及び水分の摂取が不十分である

目標:必要とする栄養状態を維持できる
O-P
1 食事摂取量
2 食欲の有無
3 全身状態、顔色、皮膚色、脱水の徴候の有無、体重の増減、BMI
4 検査データ
T-P
1 食事についてどのように思っているか話し合う
2 少しでも摂取量が増えた時には、対象者の努力を認め、次の食事摂取につなげる
3 摂取方法を工夫する
E-P
1 無理をする必要が無いことを伝える

#16引きこもりあるいは孤立化によって、他者との交流が持てない

目標:他者と交流する時間が増える。自発的な言動がみられる
O-P
1 不安レベル(経度、中等度、重度、パニック)及び内容
2 日中の活動状況
3 表情、言動
T-P
1 1対1の関係、短時間から関わりが持てるよう準備する
2 出来たことを認め、支持的なかかわりをする
3 対人関係における変化や様々な場面で不安感が強くならない現状について、本人の自発的な認識を促進し、肯定的なフイードバックをこなう
4 自発的に感情を表現できるように援助する
E-P
1 不安を感じた時はいつでもスタッフに相談するように伝える
2 無理をする必要が無いことを伝える

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