スキルアップテクニック:プリセプターシップ
現在、多くの医療機関で看護師の新人教育に、「プリセプターシップ(プリセプター制度)」が採用されています。
プリセプターシップの定義は、ある一定期間、一人の先輩看護師が、担当の新人看護師に対してマンツーマンで指導を行う制度とされています。ほとんどはウーマンツーウーマンでしょうけど。
しかし、プリセプターシップの体制は、病院や病棟によって様々な方法がとられており、広く普及してはいますが、自分が実際にプリセプターやプリセプティの立場になって初めて名前を聞く人や、名前は知っているけど実際何をしたらいいのかわからない人も多いですよね。
そこでここでは、「名前はよく聞くけどプリセプター・プリセプティってなんだっけ?」をテーマにプリセプターシップについて解説していきたいと思います。
プリセプターとプリセプティってなに?
プリセプターとプリセプティとは、簡単に言うと、指導する人(プリセプティ)と指導される人(プリセプティ)のことです。
新人看護師はプリセプティとなって、自分のプリセプターにマンツーマンで指導を受けたり、一緒に看護業務を行うことで、新しい知識や看護技術、看護業務を学んでいきます。
一緒に目標を立て、定期的に評価を行い、新人看護師が一人の看護師として成長できるようにサポートすることがプリセプターの役割になります。
また、教育以外の面でも、精神的に負担の多い新人看護師の一番身近な相談役としてプリセプターが存在します。
プリセプターになる看護師は、経験年数4年目未満の若手看護師が多いようです。
慣れない職場環境で相談するなら、年の離れた大先輩より、親近感のあるちょっと上の先輩のほうが聞きやすいですよね。
新人看護師が気軽に相談できるような環境を作るという意味でも、プリセプターシップが広く採用されているのです。
プリセプターがよく抱える悩み
プリセプターになって、得ることはたくさんありますが、正直、悩むこともたくさんあると思います。
なかでも、多くのプリセプターがよく抱える悩みをリストアップしてみると…。
- 何をどう教えていいのかわからない
- 新人の失敗を自分の責任に感じてしまう
- 自分自身の知識や技術が正しいのか自信がない
- プリセプティと上手くコミュニケーションがとれない
- 普段の業務に加え、プリセプターとしての業務が増え、余裕がなくなってしまう
などなど、たくさんの悩みをプリセプターの皆さんが抱えています。
プリセプターになったからといって、いきなりうまく指導ができるわけではありません。
自分一人で抱え込まず、主任看護師やエルダーなど教育担当の看護師に相談しましょう。
プリセプター必読の指導方法
多くのプリセプターにとって、人を指導するのは初めての経験だと思います。
ではどのように指導すれば、プリセプティを成長に導けるのでしょうか?
まず、自分が新人の時を思い出して下さい。
何をするにも、かなり緊張しましたよね?
緊張していては、本来の力は出せません。
プリセプティがリラックス出来るよう、普段から声かけを行いましょう。
次にプリセプティが行ったことやアセスメントに関して評価を行うことも重要です。
出来ていることは、些細なことでもいいので褒めましょう。
昨日出来なかったことが今日は出来ただけでも、プリセプティにとっては大きな成長なのです。
しかし、褒めてばかりでは成長はできません。
叱るときは感情的にならない
叱ることも必要ですが、その時は感情的にならないこと(自分はなってないつもりでもそう受け取られることもあるの注意)。
冷静に事実を述べ、悪かった点を指摘し、改善方法を一緒に考えましょう。
最後に一番大切なのは、実際に手本を見せてあげることです。
教科書やマニュアルに書いてあることを読むだけでは、頭ではわかっていても実践できないことが多いです。
実際に自分がやっているところを見せ、イメージをつかませることが、看護技術の獲得には有効です。
自分の手技に自信がない場合は、自分より先輩看護師や得意な看護師に協力してもらいましょう。
プリセプターの1年間って?
プリセプターとしての期間は一般的に約1年間です。
プリセプターになって、新人看護師が配属が決まると、プリセプティと顔を合わせます。
新人看護師は、最初のうちは看護手技の練習や先輩看護師のシャドーイングを行います。
病院や病棟によっては、必ずしもプリセプターとプリセプティの勤務が一緒になるわけではないので、他の先輩看護師が指導し、後日プリセプターと振り返りを行うといったところもあります。
シャドーイングの期間が終わると、プリセプティが実際に一人で日々の業務を行うことになります。
最初のうちは一緒に一日の業務計画を立てたり、アセスメントにアドバイスをしたりして、徐々にプリセプティ自身が主体となって業務を組み立てられるようサポートを行っていきます。
初めての処置やケア、夜勤などの前後には必ず指導と振り返りを行い、プリセプティの不安を取り除いてあげることも必要とされます。
仕事の後に残って、プリセプティの採血などの技術練習に付き合ったりするプリセプターも多いと思います。
プリセプティの成長を評価
うして何か月か経ってくると、プリセプティも一人でできることが増えていきます。
プリセプターは、プリセプティが出来ていることは評価し、間違って覚えていることや自信のない技術などがないか一緒に確認し、プリセプティの成長をサポートしていきます。
プリセプティの成長だけでなく、プリセプター自身も、プリセプターのフォローアップのための研修や勉強会などに参加します。
同じプリセプターの立場の看護師同士で悩みを相談しあったり、プリセプター経験のある先輩看護師からアドバイスをもらったりしながら、自分自身の成長につなげていきます。
1年を通して、プリセプターの役割として大事なのは、プリセプティが年間の新人教育の流れに沿って成長できているかプリセプティと一緒に評価していくことと、看護師の仕事や職場に馴染めるようにメンタル面をサポートしていくことです。
プリセプティの悩みの相談にのったり、元気のない時は一緒にご飯に連れて行ったりすることも、単なる先輩看護師ではないプリセプターのお仕事の一つです。
プリセプティへの気持ちを手紙で伝えよう
プリセプター期間の終わりに、プリセプティからプリセプターに感謝の手紙はよく聞きますよね。
最近では、プリセプターからプリセプティへの手紙を書くことも多いんです。
「一年間、よく頑張ったね。○○ちゃんが成長していくのをみて私もうれしかったよ。これからも同僚として一緒に頑張ろうね。」
や
「辛い時もあったと思うけど、看護師として立派に成長したと思います。○○さんのプリセプターになれてよかったよ。これからもなんでも相談してね。」
など、簡単な言葉でも、プリセプティのこれまでを労い、成長を褒めてあげて下さい。
また、普段から、口で伝えるのが苦手なプリセプターさんには、伝えたいことを手紙で伝えるのもプリセプティとのよいコミュニケーション方法です。
「最近元気ないけど大丈夫?何かあったら話聞くよ?」「さっきは怒ってごめんね。でも大事なことだからちゃんとわかって欲しかったから。明日からも頑張ろう。」
など、面と向かって言えなかったことを、ロッカーなどに手紙で置いておくことで、プリセプティとの関係もよりよくなるといったこともあるでしょう。
プリセプティ側が抱える悩み
では次はプリセプティについてみていきましょう。
プリセプティは、看護学校を卒業したての新人看護師が多いと思いますが、、、中には別の職場での看護師経験がある看護師もプリセプティとなる場合もあります。
プリセプティが抱える悩みとして多いものをリストアップしてみると…
- できないこと、わからないことだらけで看護師としてやっていけるか不安
- プリセプターに迷惑をかけていると感じる
- プリセプターと上手くコミュニケーションがとれない
などなど。
新人看護師は、初めはみんななにも出来ない
プリセプティ(新人看護師)わからないことがあるのが当然で、そのために指導係としてプリセプターを始めとする先輩看護師がいるのです。
怒られることもあると思います。怒られない新人看護師はいません。
大切なのは、きちんと挨拶をすることや、報告・相談をすることです。
わからないことはわかるまで聞きましょう。
プリセプティーや先輩看護師は教える義務があります。
自分で勉強してきてわからなかったことや、自信のない看護技術など、積極的に相談してみましょう。
プリセプターとの人間関係
自分一人で言いにくい時は、新人同士で集まって、プリセプター達や先輩看護師に聞いてみるのもいいでしょう。
新人看護師が抱える最も大きな悩みに加えて、プリセプターとの人間関係もプリセプティの抱える悩みの一つでしょう。
プリセプターとプリセプティは人間同士ですから、性格的な相性もやはりあります。
そんな時は一人で悩まずに、相談しやすい先輩や主任看護師に相談してみて下さい。
プリセプターも人に教えることが初めてで、どうしたらいいかわからないと思っているかもしれません。
プリセプターシップは、プリセプティである新人看護師とプリセプターをする先輩看護師の両方が成長するための制度でもあります。
プリセプターに迷惑をかけているなど思わず、しっかり学ぶ姿勢をみせれば、お互いにとってよい環境となるはずです。
はじめての夜勤
看護師として働き始めて初めての夜勤…緊張しますよね。
普段寝ている時間にちゃんと頭が働くかどうか、日勤ですらいっぱいいっぱいなのに、より多くの患者さんを看護できるかどうか、夜勤明けの先輩たちの疲れ切った姿をみていると、新人看護師みんなが不安でいっぱいだと思います。
ではなぜ夜勤が大変そうに感じるのか。
それは、日勤に比べ看護師の人数が少ないからです。
患者さんの検査や処置介助、保清などの看護ケアは日中に比べ少ないですが、看護師の人数が少ないため、一人の看護師が多くの患者さんを担当しなければならず、検温にも時間がかかります。
また、急変や緊急時に少ない看護師で対応しなければならず、新人看護師には負担が大きく感じるでしょう。
初めての夜勤の前に大事なことは、
- 夜勤の前に夜勤のスケジュールをマニュアルやプリセプターと確認しておくこと
- よく寝て、しっかりご飯を食べ、体調を整えておくこと
- 緊急時の対応について確認しておくこと
最初から上手くできなくても、夜勤の回数を重ねるうちにだんだんできるようになります。
最初のうちは体調を整えることを意識して夜勤に臨めば大丈夫です!
プリセプターへのお礼
看護師として働き始めて1年が経つ頃、とうとうひとり立ちの時がやってきます。
今まで1年間、優しく、時には厳しく指導してくれたプリセプターに感謝の気持ちを伝えましょう。
お礼といっても、お金のかかるプレゼントはプリセプターにも気を使わせてしまうかもしれません。
お礼をする場合は、感謝の手紙やカードを渡すとよいでしょう。
プリセプターにとって、一番うれしいことは、自分のプリセプティが成長していく姿を感じることです。
これまでの感謝と成長できたことを手紙にしたため、今後プリセプターの心強い同僚となれるよう努力し続けることが、プリセプティとしてプリセプターにできる最高のお礼なのではないでしょうか。