スキルアップテクニック:ケーススタディから学ぶ看護師のトラブル
ケース1:怖い、弁償できない高価な物品を破損
患者さん、利用者さんの私物を取り使う時は、細心の注意を払う。看護学校の時、実習で耳にタコができるほど看護教員に聞かされました。
看護学生の時は、ヒヤヒヤドキドキし慎重に取り扱っていたものの、看護師として業務に入ると、忙しさが先に立ってしまいますね。
・病棟看護師Aさんの体験した事件
今日は苦手なZ先輩との2人夜勤、何とか乗り切って、朝食の配膳時間を迎えました。あと数時間で勤務終了!ラストスパートです。
患者さんの朝食がだいたい終わり、洗面所に行けない患者さんの口腔ケアをしていました。患者さんの部分入れ歯を洗面所で洗浄していると、手が滑り、なんと排水溝に流してしまったのです。
慌てて流水を止め、設備担当者の人に連絡しましたが、部分入れ歯は結局見つかりませんでした。
患者さんと家族は、「高価なものなので何とかして探せ、すぐに弁償しろ!」と激怒しています。
高価な物品の破損、紛失はゾッとするほど怖いものです。特に義歯や部分入れ歯は、看護師が取り扱うことが多いものです。完全オーダーメイドですから、弁償したくてもできないこともあります。
ケース2:自分ならどうする!?訪問看護での暴力
最近、看護師1人で行う訪問看護先で、利用者さんや家族から受ける暴言暴力が問題になっています。看護師2人訪問や男性看護師採用などの動きも出ていますが、制度化はされていないのが現状です。
・訪問看護師Bさん体験した事件
訪問看護で、夫婦ともに認知症がある利用者さん宅に伺いました。
まずは、足浴と座位訓練のため、奥さんを車いすに移乗しようとしますが「痛い」と抵抗が激しく、なかなか介助が進みません。なだめすかしながら、両脇に腕を入れて、抱き起そうとしたときに、背中に激痛が!
なんと夫がBさんに杖で殴りかかってくるではありませんか!
認知症のある夫は、奥さんが嫌がらせを受けていると思い込んだようです。背後からの攻撃は避けようがありませんし、武器は杖ですからかなり怖かったようです。幸い軽い打撲で済みましたが、一人訪問はこりごりです。
訪問看護でのゾッとする体験ですが、利用者さんから暴言暴力を受けることは珍しくない様です。
ケース3:看護師の人間関係、心当たりのないパワハラで訴えられる
ゾッとする事件は、職場の人間関係でも起こります。悪口を言った、言われた程度の事は日常茶飯事だと思いますが、もっと怖いことも起こるようです。
・クリニック看護師Cさんの体験した事件
クリニックで勤務するCさんは、事務長に呼び出されました。仕事上のトラブルはなく、他のスタッフとも仲良く働いていたため、呼び出される心当たりは全くありませんでした。
事務長からは、ただならぬ緊迫感が漂っておりCさんは「患者さんからの苦情かな」と不安に感じたそうです。そこで手渡された1枚のFAX。
FAXは管轄の労働基準監督局からでした。数日前に退職した看護師Dさんからの訴えについての問い合わせ状でした。
看護師Cさんにイジメ、パワハラを受け退職に追い込まれたと訴えている、事実確認したいという内容で「能力以上の仕事を押し付けられて精神的に病んだ」「無視されて、周囲との人間関係を壊され、退職に追い込まれた」というものでした。
Dさんは、一カ月ほど勤務してすぐに辞めてしまったスタッフで、職場に合わない、という理由で辞めていきました。Cさんにはイジメ、パワハラをした心当たりがなく驚いてしまいました。なぜ自分が名指しされたのかも分かりません。
イジメられた、パワハラで退職に追い込まれた、と訴える相手にそのような事実はないと実証することは大変です。幸い、クリニックの職員全員が、そのような事実はないと証言してくれて問題は解決したようです。
にこやかに挨拶して辞めていったDさん。心当たりのないパワハラで訴えられたCさん、人の心の闇にゾッとしたそうです。怖い体験談ですね。
ケース4:注意だけでは防げない、医療廃棄物処理で針刺し事故
点滴や注射針での針刺し事故は怖いものです。
使用した針にキャップをしない、すぐに医療廃棄物BOXに捨てる、など各病院で針刺し事故対応マニュアルに沿った看護技術が求められますね。しかし、注意していても防げないことがあるようです。
・看護師Eさんの体験した事件
段ボール製の医療廃棄物BOXがいっぱいになったしまったので、上ぶたを閉めガムテープで封をしようとしたときに起こりました。
上ぶたを上から押し付けるように閉じていたEさん、手のひらに鋭い痛みが!なんと、段ボール製のBOXを突き破って、針が飛び出し、手に刺さったではありませんか。
段ボール製の医療廃棄物BOXには、針、アンプル、割れるもの、水分が多いものは入れないことになっていますが、針を付けたままの注射器が混入しており、運悪く段ボールを突き破ったのです。
どの患者さんに使った針かも分からず、完全なもらい事故で、看護師Eさんは目の前が暗くなるようなショックを受けたと言います。その後、1年間の感染症の追跡調査で、異常が無いことが分かり、やっとホッとしたそうです。
注意だけでは防げない、針刺し事故は、本当に怖いですね。
ケース5:あわや火事、病室内での喫煙が恐ろしい
病院は防災上、全館禁煙が基本です。最近では、職員の喫煙所すらない医療機関が増えてきました。
入院される患者さんにも、入院オリエンテーションで禁煙について説明しますね。しかし、患者さんの中には、どうしてもタバコが我慢できない方、認知症などの理由で看護師の注意を忘れてしまう方がいます。
・看護師Fさん体験した事件
夜勤中、巡回していた時の事。個室患者さんの病室から、かすかなタバコの残り香を感じました。注意して観察すると、ゴミ箱には吸い殻が!
通路に面した窓にかかるカーテンをよく見ると、タバコで焼けた穴が開いているではありませんか。患者さんは、通路に面した窓を開けて、隠れてタバコを吸っていたようです。カーテンは、燃えにくい素材だったため、一部が焦げただけで済みました。
隠れタバコで、夜間にカーテンが燃えたらどうなるでしょうか。もちろん火事です。
看護師Fさんは「自分が夜勤の時に火事になっても、絶対助けられない」とゾッとしたそうです。いっそ、病室から脱走して院外でタバコを吸ってくれる方がマシだと思いますね。
過去には、病院火災の事件も起きています。
患者さんの持ち物を全てチェックすることは出来ませんし、24時間監視も不可能です。難しい問題ですね。
看護師にとって怖いことは、インシデントと関連あり
看護師にまつわる怖い事件は、インシデントと深く関連しています。
ゾッとするだけで済めばマシな方です。患者さんからの暴力は、怪我をする恐れがありますし、悪質な場合は刑事事件に発展する危険性があります。患者さんが病院の規則を守ってくれず喫煙した場合、病院火災が発生し、他の患者さんが巻き込まれることも考えられますし、実際に病院火災による死亡事故も起こっています。
どんな事件も「怖かった」「驚いた」で済ませることなく、再発防止の対策を取っていく必要があります。看護師は安心して働けません!
勤務している病院や施設は、看護師が怖い思いをした事件について、しっかり耳を傾けてくれますか?再発予防に動いてくれますか?振り返ってみる必要がありそうですね。
まとめ
看護師にまつわる怖い事件は、患者利用者さんからの暴言暴力、人間関係、針刺し事故、規則を守らない患者さんの行動など、たくさんの種類があります。
どれも、お化けに遭遇するよりもゾッとする怖い事件です。
看護師が怖い事件に巻き込まれないコツは「過去に合った怖い事件を知ること」です。先輩たちが怖いと思った事件について、知ることが大事です。
また、万が一のときのために、看護師が入っておく保険というものもありますので、こちらも知っておくと良いでしょう。