疾患別看護計画:慢性腎不全

慢性腎不全の看護計画

#1水調節機構が低下しており浮腫や脱水をきたしやすい

目標:体内の水調節機構が低下していることを理解した上で日常生活管理が行える
O-P
1 検査データ:糸球体濾過値、一日尿量3000以上時は利尿期、400以下は乏尿期
2 脱水症状:糸球体濾過値が20ml~40/分には水貯留よりも水不足になる
3 浮腫:水分摂取が過剰となった時同時にナトリウムも増加すれば浮腫になる。水過剰を起こしてもNaが増加しない時は低ナトリウム血症を招き脱力感を引き起こす
4 尿量:糸球体濾過値が20ml以下に低下すれば、尿量に応じて水分摂取量が決定される。尿量+500Ccが基準
5 水分摂取、食事摂取量
6 その他の検査データの動き:BUN、クレアチニン
7 自覚症状:
8 体重の増減
T-P
1 体重測定:毎日
2 浮腫、脱水が見られれば安静を促す
E-P
1 腎臓の機能の説明:正常人では尿量を500~5000CC/日まで増減することが出来る。糸球体濾過値が低下するとこの幅が狭くなり上限が低下して下限が上昇する。従って水を多く取れが貯留し水を制限すれば脱水となる。以上のことから急激な飲水を避けたり、無理な水分制限は避けるように指導する

#2低たんぱく高エネルギー食により食欲低下をきたしやすい

目標:食事療法の意義を理解し治療食を全量摂取できる
O-P
1 食事摂取状況、食事摂取時の表情の観察、間食の有無
2 患者の嗜好を知る
3 腹部膨満感の有無、食事の満足感
T-P
1 同様な治療食を摂取している患者同士がコミュニケーションを持てるように必要時援助する
2 患者の訴えに耳を傾け摂取できない理由を把握する
3 医師が栄養士へ栄養指導を依頼した際の連絡役となる
E-P
1 食事についてくる特殊食品の必要性を説明する:ゼリー、ドロップ、粉飴、無塩パンなど
2 原則として治療食以外の間食は禁止する:希望する食品があれば医師の許可を得てからと説明する
3 腎臓病の食品交換票を使用できる理解力のある患者に対しては、その指導を行う
4 ドロップを食事時間に摂取できなかった場合は、食間に少しづつでも良いから摂取するように説明する

#3安静を強いられるためにストレスを生じる

目標:安静の意義を理解し治療の一貫として自主的に安静に努められる
O-P
1 定められた安静の保持ができる
2 ベッド臥床安静時に患者は何をして過ごしているか
3 精神的ストレス、入院しているために心配な事気にかかることは何か
4 運動前後のバイタルサインの変化
T-P
1 患者とゆっくり話す時間を、努めて持つ
2 配膳下膳を行う
3 排泄の介助:患者の精神的負担とならないように気を配る
4 清潔の介助:状態に応じて清拭、洗髪介助、足浴等を行う
5 ベッド周囲の環境整備に気を配る
6 気分転換を図れるようなケアをする:例えば医師の許可を得て車椅子散歩
E-P
1 腎臓病についてパンフレットに沿って指導する
2 医師より治療方針を説明してもらう
3 医師より検査データを随時説明してもらい安静への意欲を高める:患者によっては望ましくない場合もある

#4代謝性アシドーシスに傾くために倦怠感がある

目標:酸、塩基のアンバランスを招くことなく倦怠感を生じない
O-P
1 頭重感、倦怠感、眠気等の自覚症状の観察
2 血液ガス:HCO3の低下、BEの変化、pHの低下
3 抗カリウム血症の有無
4 アルカリ剤与薬中は特にK、Ca、Na値の異常の有無
T-P
1 薬剤の正確な与薬
2 薬物管理が不十分な場合は看護師管理とする
3 倦怠感が強い場合は特に危険防止に注意してベッド周囲の生理を行う
E-P
1 患者に安静の説明を行い無理をしないように注意する:倦怠感の強い時には看護師に連絡するように説明する
2 倦怠感が強度となった場合や息苦しさがある場合羽―スコールを押すように指導する

#5尿毒症性物質蓄積の為に不快な神経、消化器症状がある

目標:不快な症状が緩和される
O-P
1 知覚障害:下肢末端から始まる、足が焼けるような感じ
2 自律神経障害:低体温、唾液の分泌低下、無汗症、起立性低血圧
3 消化器症状:食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、下痢、口臭
T-P
1 下肢末端の異常感に対し冷湿布の施行や蒸しタオルで清拭する
2 食事量摂取と一日の摂取量の申し送りを行う
3 便秘下痢時は医師に報告し下剤や止痢剤などの指示を受ける
E-P
1 起立性低血圧のある時にはいきなり立位となることを避けたり、早朝起床時の手足の軽い運動を進める
2 口臭が不快である場合には含嗽の励行を勧める
3 室内の換気を定期的に行うように指導する
4 便秘傾向のある場合は腹部マッサージを指導する

#6透析、内シャント造設術に対する不安が強い

目標:正しい知識を持つことにより、精神的に落ち着いた状態でシャント造設術、透析を受け入れられる
O-P
1 透析について抱いている不安の状態
2 夜間の睡眠状態
3 学習意欲:どのような本を読んで知識を得ているか
4 血管の状態
T-P
1 採血は末梢から行い手関節ひじ関節は避ける
2 患者の疑問な点が有ればその都度きちんと対処する
E-P
1 透析についての説明:医師により行われる。看護師も立ち合い説明内容を把握しておく
2 透析室にて実際の透析の場を家族とともに見学する機会を持つ:これは医師の許可を得て透析されている患者の状態の良いときに行う
3 シャント造設術の為に血管を大切にしておくように患者にも説明する

#7腎性高血圧を伴い、腎機能低下を促進させる

目標:正常血圧の維持ができる
O-P
1 血圧の値とその変動
2 血圧上昇に伴う随伴症状:頭痛、吐気、眩暈
3 血圧の日内変動、運動との関係、薬との関係
4 水分塩分摂取状況:治療食以外の副食物摂取の有無を見る(味付け海苔、梅干し、佃煮、ふりかけ)
5 降圧剤を服用している場合は、腎血流低下を招くような血圧値となっていないかをチェックする
T-P
1 血圧上昇時は医師に報告、患者は安静臥床とする:降圧剤使用時はその後の血圧チェックを行い医師に報告する
2 頭痛のぼせ感のある場合は希望に応じて氷枕などを施行する
E-P
1 降圧剤使用時は急激な血圧の低下や気分不良時などの副作用の出る場合があることを良く説明し、その症状がある時はナースコールをするように説明する
2 高血圧の成因を医師より説明してもらい、患者が血圧値に神経質になりすぎないように援助する
3 安静臥床時の普段の血圧値を認識してもらっておく
4 高血圧であっても降圧剤が腎臓にとってマイナスとなるために放置しておくことがあり、その場合も患者が十分に理解でき不安感を抱かないように助言する

#8腎機能低下に伴い皮膚掻痒症が出現する

目標:掻痒感が緩和され安静、睡眠を障害されない
O-P
1 掻痒感:強くなる時間帯、食事との関係、睡眠障害の訴え、特に強い部位
2 皮膚の状態:掻き傷、浮腫、乾燥などの有無
T-P
1 掻痒感が激しく自制不可の場合は、医師に報告して指示を受ける
2 一時的な対処療法の介助を行う
3 清拭を適宜行う(眠前に掻痒感が強く就眠障害のある場合は眠前にも行う):石鹸使用は避け沐浴剤などを使用する
4 軟膏使用時はその塗布を介助する:清拭後に塗布する
E-P
1 爪切りの指導
2 出来るだけ強く掻くことを我慢して、無理なら軽くたたくように指導する
3 適切な肌着(ナイロンを避け繊維のものを勧める)
4 掻痒感の為に睡眠障害や精神的いら立ちのある場合は訴えるように説明する

#9高カリウム血症の為に薬物、食事療法が必要となる

目標:高カリウム血症による弊害を理解でき薬物食物の自己管理ができる
O-P
1 ECG:テント状T波、QRS幅
2 不整脈の有無
3 胸部症状
4 意識障害、知覚障害、筋麻痺:血清カリウム値7mEq/1以上になってから
5 陽イオン交換樹脂の服用時の排便の状態
T-P
1 カリウム制限:尿量1000CC以下、血性クレアチニン5,0以上時
2 服薬介助:自己管理の難しい患者に対しては看護師が管理する
E-P
1 カリウム制限指導:生野菜、果物制限
2 服薬指導:服用方法と服用の意義

#10退院後の食事、生活管理が困難である

目標:退院後の食事、生活管理が積極的に行われ透析導入時期を遅らせることが出来る
O-P
1 退院後の生活状況の把握
E-P
1 患者の理解力が不十分な場合は家族も一緒に指導を行う
2 腎臓病のパンフレットに沿って指導を行う
3 透析導入に際しては、検査データのみならず、患者の自覚症状の程度にもよることをあらかじめ説明しておく
4 患者と医師とで相談の上、透析を受ける病院をあらかじめ設定して置く
5 食事療法:パンフレットを参考
a 医師が指示した食事内容を守るように指導する
b 栄養士から栄養指導を予定する
c 腎臓病の食品交換票の使用法を指導する
d 粉飴、無塩パンなどの購入を希望する際は購入先や購入方法を調べておく

#11造血機能の低下による貧血と、血小板の機能低下があり出血しやすい

目標:出血の原因を避け貧血の是正ができる
O-P
1 検査データ:
2 正色素性貧血か鉄欠乏性貧血か
3 動悸、息切れなどの自覚症状
4 心音:心雑音
5 眼瞼結膜色、爪床色
6 女性の場合月経の有無、周期、日数、量
7 便の性状
8 皮膚、皮下出血班の有無
9 歯肉出血の有無
T-P
1 輸血時の介助:輸血はゆっくり観察は密に行い副作用の発現に注意する
2 便潜血の定期的な検査
3 採血注射の圧迫止血は充分に行う
E-P
1 鉄剤使用時は服用後30分の茶、コーヒーの禁止:便が黒くなることをあらかじめ説明しておく
2 腎臓から分泌されているホルモン(エリスロポエチン)が少なくなるために貧血になることを説明する
3 血小板数の減少は無いが、その機能の低下があり、血が止まりにくくなっていることを説明して自らも出血に注意するように指導する
4 歯ブラシは柔らかい豚毛を使用し強くこすらないように指導する
5 エリスロポエチン製剤の定期的な注射時はスケジュールを説明しておく

#12多数の薬剤を服用することから薬物管理が難しい

目標:薬の効用や副作用を知り正しく服用できる
O-P
1 薬が正確に服用できているか
2 薬についての理解度
T-P
1 薬の服用が正確に行えていない患者に対しては、看護師管理にするかまたは一日の薬剤入れを工夫して介助する
2 利尿剤、電解質是正薬は特に注意を要する
E-P
1 それぞれの薬物と副作用を理解して薬物管理が行えるように指導する
2 勝手に薬物を調節しないように指導する

#13肺うっ血や心不全を引き起こす恐れがある

目標:水、電解質調節機能低下による溢水を招くことなく、より安楽に過ごせる
O-P
1 検査データ:Na、K、Cl、Ht、TP、血液ガス分析
2 バイタルサインチェック:BPの減少、PRの増加
3 肺音、呼吸状態、RR
4 飲水量、食事量
5 尿量、尿比重、尿の性状
6 水分出納
7 心電図、胸部レントゲン
8 体重の増減、浮腫の有無
9 喀痰、咳嗽
10 抹消循環状態:冷感、爪床色
11 呼吸困難感、動悸等の自覚症状
12 UCGの結果:心嚢液貯留の有無
T-P
1 安楽な体位の工夫をする
2 必要に応じ食事量、飲水量をチェックして水分出納を各勤務帯で算出する
3 体重測定を毎日行う
4 徴候がある場合、又は医師の指示がある場合はそれに従い安静を保持する
5 安静時配膳、下膳を行う
6 清拭、洗髪介助などを行う
7 点滴施行時はその速度に十分注意する
8 酸素吸入時はその管理を行う
9 心不全症状出現時には医師に報告する
E-P
1 安静の必要性を説明する
2 定められた食事を摂取するように指導する
3 尿量が少ないとき、また自覚症状に変化があった時は知らせるように説明する

#14カルシウム吸収障害による骨痛や骨折がみられることがある

目標:骨の減弱化を意識して生活管理が行える
O-P
1 検査データ:血性カルシウム、P、アルカリフォスファターゼ、副甲状腺ホルモン、カルシトニン
2 骨レントゲン:骨の密度
T-P
1 高齢である場合は特に店頭に注意を要し、疼痛の訴えがあればすぐに医師に報告する
E-P
1 骨の減弱化の原因を説明し、骨折に注意するように説明しておく

#15色素沈着が進行し外見的に負い目を感じる

目標:健康に対する価値感、意識の自己改革ができる
E-P
1 女性の場合とくに精神的援助を行う。色素沈着は尿中に排泄されるべき色素が貯留する為と説明する

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